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Interview

デビューした先輩たち_俳優 毎熊 克哉 さん

業界で活躍する卒業生に聞きました

映画『北の桜守』『万引き家族』連続テレビ小説『まんぷく』など、さまざまな映画やテレビドラマに出演する卒業生・毎熊克哉さん。
活躍の幅を広げる毎熊さんに、学生時代の思い出、役者としての仕事への取り組み方について語っていただきました。

俳優

毎熊 克哉 さん

Maiguma Katsuya

2008年卒業

1987年3月28日生まれ、広島県出身。

2016年公開の主演映画『ケンとカズ』で第71回毎日映画コンクール スポニチグランプリ新人賞、第31回高崎映画祭 最優秀新進男優賞等を受賞し大きな評価を得る。以降、TV、映画、舞台、ナレーションと幅広く活躍。

主な代表作に、TV、連続テレビ小説『まんぷく』(NHK/18)、『少年寅次郎』(NHK/19~20)、『恋はつづくよどこまでも』(TBS/20)、『妖怪シェアハウス』(EX/20)、『半径5メートル』(NHK/21)等。映画に『北の桜守』(18)、『万引き家族』(18)、『空飛ぶタイヤ』(18)、『いざなぎ暮れた。』(19)、『AI崩壊』(20)、『サイレント・トーキョー』(20)、『孤狼の血 LEVEL-2』(21)、『マイ・ダディ』(21)、公開待機作に『猫は逃げた』(今泉力哉監督)が22年3月18日公開予定。

やってみたい!その想いが「最初の一歩」

同級生と撮った自主映画がきっかけで役者人生が大きく花開いた

さまざまな作品に出演されています。きっかけと近年の出演作を教えてください。
毎熊 克哉さん

役者として、今のように仕事をいただけるようになったのは、自主映画『ケンとカズ』がきっかけでした。この作品は、専門学校の同期だった監督・小路くんと卒業後に撮ったもの。「2015年第28回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門」で作品賞を受賞し、主演の僕も「第71回 毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞」「おおさかシネマフェスティバル2017新人男優賞」「第31回高崎映画祭最優秀新進男優賞」と立て続けに賞をいただきました。

その後は、2018年に吉永小百合さん120本目の出演作・映画『北の桜守』、是枝裕和監督作品・映画『万引き家族』、NHK連続テレビ小説『まんぷく』、2019年には豊原功補さんが企画・脚本・演出を務めた舞台『後家安とその妹』、テレビ東京のドラマ『Iターン』、NHK土曜ドラマ『少年寅次郎』、2020年には1月公開の大沢たかおさん主演映画『AI崩壊』にも出演させていただきました。そうそうたる俳優さんやスタッフさんとご一緒させていただきながら、映画・テレビ・舞台の作品づくりの違いを学んでいる最中です。

映画とテレビドラマでは、時間の流れ方が違うんですよ。映画は「じっくり」、テレビドラマは「ぎゅっと」。現場の空気もさまざま。自分のなかに経験値が溜まっていくことが実感でき、毎日が充実しています。

映画のつくり方、コミュニケーションetc.すべては、実践の場で学んだ

小さなころから映画が好きだったそうですね。
毎熊 克哉さん

3歳で『E.T.』にハマって以来、映画が大好きになりました。『タイタニック』『ターミネーター2』などは何度も何度も観た映画で、特に印象に残っています。ですから、この学校に入学を決めた理由も単純でした。「映画が好きだから映画をつくりたかった」(笑)。子どものころは、映画をつくるのは映画監督だと思っていたんですけど、いざ入学する段になって、なぜか「映画をつくるならまずは撮影のこと知らなきゃ」と思っちゃった。入学したのは撮影照明専攻です。でも学んでいくうちに、自分が学びたかったのは、やはり「映画づくりの指揮の仕方」だと気づいて、2年生からは監督専攻に変更しました。

この学校で一番驚いたのは、「実際につくってみる」ということに対するこだわりです。入学したてのワケもわからない学生たちを前に、先生がいきなりグループ分けして、「さぁ、映画を撮れっ!」って。たしかに映画は好きだったけど、映画の撮り方なんて知るはずがない。アドバイスはもらえるけれど、何から始めたらいいかわからない。メンバーそれぞれが好き勝手に言いたいこと言い出すからケンカも始まるし。“わやくちゃ”ですよ、そりゃ(笑)。

とはいえ、完成させなければならない。それで、自分の意見を通すためにはどう言えばいいかを考えたり、全員で落としどころを探ったりすることで、コミュニケーションのとり方も身についた。全部撮り終えて、編集し始めたら「コレ、話がつながってないよなぁ…」と気づき、撮影し直したこともありました。そうやって、ぶつかりながらもがきながら、とにかく撮ってみるというのが一番勉強になったと思います。

監督専攻だった僕が、なぜいま役者をやっているかといえば、僕が役者さんに演技のイメージをうまく伝えられなかったから。在校中に僕が監督した映画で、僕のイメージに沿って役者さんに演じてもらいたいんだけど、伝え方がヘタで伝わらない。面倒だから自分で演じてみよう、と。本格的に役者の勉強を始めたのは卒業してからです。

やらなければわからないこともある。純粋な気持ちを信じてチャレンジを

これからエンターテインメント業界をめざす方へメッセージをお願いします。
毎熊 克哉さん

僕は「遅咲きの新人」とも言われるんです。こうしていろんな作品に出演させてもらえるようになったのは、30歳を過ぎてから。それまでは、役者だけでは食べて行けず、引っ越しのアルバイトをしながら、オーディションを受け続ける「下積み生活」でした。

高校生時代もごく一般的な生徒でしたよ。たぶん影が薄かったんじゃないかな。ダンスしかやってなかったから、テストも散々、赤点もいっぱいでした。
 学生時代を振り返って、もっとやっておけばよかったなと思うのは、高校時代なら「勉強」かな。特に、英語と歴史。英語は、海外の映画祭などに呼ばれることもあり、英語ができたらもっといろんな人と交流できると思うんですよね。歴史は、『北の桜守』にしても『少年寅次郎』にしても、作品の時代背景を知らないと演じられない。演じる手前で「歴史」の復習から始めています。ちゃんと勉強しておけばもっとラクだったかもしれませんね(笑)。

専門学校時代なら、やはり「作品づくり」です。この学校は授業外でも機材を貸し出してくれた。一年中、何本も映画をつくっている学生もいましたけど、僕はねぇ…(汗)。機材を借りる申請がめんどくさくなっちゃって、結局2本しかつくりませんでした(笑)。もっとつくっておけばよかったなぁと思います。
 入学した時の専攻だった「撮影・照明」も、もっとやっておけばよかったと思うことの一つです。たとえば、映画は基本的に1台のカメラで撮りますが、テレビでは1つのシーンを4台ぐらいのカメラで同時に撮るんです。大げさに動きすぎると、誰かの陰になって、フレームに収まりきらないカメラが出てくる。演じる空間は、映画の比ではなく狭いんです。もっと撮影の勉強をしておけばよかったかなぁ…なんて思う瞬間ですよね。

こう話すと、ムダな遠回りをしているように思われるかもしれませんが、そうじゃないんですよ。学生時代に経験したことに、何一つムダはない。高校時代にハマったダンスにしても、演技の身のこなしに生きています。ムダな経験なんて、本当にないんです。
 いまの僕が学ばねばならないことは、無数にあります。あり過ぎて全部はできませんよ。出くわしたそのときごとに、一つひとつ丁寧に向き合っていこうと思っています。だからいまは、歴史も勉強したいし、英語もやりたい! 必要になったそのときこそが、一番身につきやすい時ですから(笑)。

今後意識していきたいことは、“若い人たちと一緒に何かを企むこと”かな。『ケンとカズ』という作品は、この学校で知りあった仲間が集まって、当時、あまり見たことのない邦画をめざして、2年近くかけて形にしたものなんです。誰に認められていたワケでもない、未来なんてまるでわからない。それでもやってみたい、つくってみたい。ギラギラした想いだけが頼りだった。苦い思いと喜びと、そして仲間と情熱と。むき出しのエネルギーがあったからこそ、あの作品ができた。その“熱”を忘れないためにも、「若い人たちと何かを一緒に企む」ことができたらいいですよね。
 「やってみたい、やってみよう」という自分の想いを信じて、最初の一歩を踏み出してみたらいいんじゃないかと思いますよ。

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